その他
豊かな植生を誇る高尾山には、これまで紹介した生き物たちの他にも、宝と言える生き物が多数生息しています。ここでは、地味な外見に反して綺麗な鳴き声が特徴的なカジカガエルや宝石のような鮮やかな黄緑色が美しいワキグロサツマノミダマシなどを紹介します。
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本州、四国、九州、五島列島に分布。
平野から丘陵地の湿地や水辺、特に水田に多く生息している。
少し変わっているこの名前は、オランダのライデン王立自然史博物館館長を務めたドイツの動物学者ヘルマン・シュレーゲルにささげられたもの。
体色は腹部をのぞいて鮮やかな黄緑色。
よく似たニホンアマガエルとは、顔がややとがり気味なことと、目を通る黒い線がないことで区別できる。
昆虫やクモ、ムカデなどを捕食する。多くのカエルは水中を産卵場所にするが、シューレゲルアオガエルは水辺の土に穴を掘り、その中に産卵する。
卵はメレンゲ状の泡に包まれており、ふ化すると雨水とともに水辺へと流れ込むようになっている。
体長|約3~5センチ
季節|4~10月頃 -
南限は屋久島まで、日本全国に分布しているもっともポピュラーなカエル。
平地や低山の水辺を主なすみかにしている。
体の背面は通常あざやかな緑色だが、周囲の環境や状況によって茶や灰褐色などに変えることが可能。
「グワッ、グワッ、グワッ」とのどにある
鳴のう(めいのう:鳴き声を響かせるための袋)を風船のようにふくらませながら鳴く。
昆虫やクモなどを主に食べる。
かわいらしいのでついふれてみたくなるが、皮ふの毒性が強く、アマガエルをさわった手でそのまま目をこすったりすると、かなり痛むので注意しなくてはならない(他の両生類も同様)。
オタマジャクシは左右の眼がかなり離れており、他種のカエルの幼生とすぐ区別できる。
体長|約3~4センチ
季節|4~10月頃 -
北海道から九州までのほぼ全土の河川に分布。
川の上流域から河口付近、あるいは湖や沼など、生息域は非常に幅広い。
また、ほかの魚ではまず生きることのできない酸性の水域にも棲息している。
一生を河川で過ごす淡水型と、海へ出る
降海型(こうかいがた)がいる。「アカハラ」「イダ」など各地方でいろいろな呼び名があり、東京では「ハヤ」の名で親しまれている。
水生昆虫、水底のコケ、魚卵などを食べる雑食性。
産卵期を迎えると婚姻色(繁殖期に現れる体色)を示し、鮮やかな朱色と黒のストライプ模様が交互にくっきりと並び、非常に美しい。
全長|約30センチ前後
季節|通年 -
「ヤマメ」というのは魚種名ではなく、サクラマスのうち、海に下らず河川に残留するタイプを指す。
北海道、神奈川より北の本州、瀬戸内海側を除く四国、九州の一部の河川に分布。
夏でも20℃を超えない水のきれいな川の上流域に棲息し、水生昆虫や川に落ちた昆虫、甲殻類、魚類などを餌にしている。
6~12個の大きな斑点模様(パーマークとよばれる)が体側に並び、中央はうっすらと赤みがかってとても美しく「渓流の女王」とも称される。
よく似たアマゴはサツキマスの河川残留型で、体側面に朱色の斑点が並ぶことで区別できる。
※ここでは、「斑点」は点状の模様、「斑紋」はある程度大きな模様を指しています。
全長|約30センチ前後
季節|通年 -
本州、四国、九州と、南西諸島に分布。
平地から山地の雑木林や緑地に生息する。
頭胸部と脚は茶褐色で、腹部の背面には黄色や褐色、白色の横帯が並び、褐色の帯には白い斑点がある。
コガネグモによく似ているが、名前が示すようにずっと小さく、体長は半分くらい(メスの場合。オスの大きさはあまりかわらない)。
木と木の間などに円形の網を張り、その中心部に「X」の形(不完全な場合もある)をした幅広の糸をつける。
これを「隠れ帯」といって、そこに脚を2本ずつ揃えてとまり、自分の姿をわかりにくくする。
臆病な性質で、危険を察知すると網からすばやく飛び降りて草むらなどに隠れる。
体長|メス約8~12ミリ、オス約4~5ミリ
季節|7~10月頃 -
北海道、本州、四国、九州に分布。
低山地から山地の雑木林や緑地に生息する。
体色は暗褐色で、後端がとがった卵形をした腹部の背面には茶や白の斑点がまじり、独特の模様を持つ。
脚には白と黒の部分が交互に並ぶ。
その名のとおり、主に山間部を棲みかにするオニグモの仲間で、高尾山では夏から秋にかけて林道や林の周辺などでよく見られる。
2メートルほどの間隔の木の間に大きな円形の網を張り、セミなどの大型の昆虫も餌にする。
網から離れ、糸の付け根の木や草に身を隠していることもある。
体長|メス約17~20ミリ、オス約8~13ミリ
季節|6~9月頃 -
北海道、本州、四国、九州と、南西諸島に分布。
平地から山地にかけての林や緑地、庭園などに生息する。
腹部の背面が明るい黄緑色をしているのが特徴で、腹部の形はオスでは卵形、メスはより円形に近い。
近い種類のサツマノミダマシ(京都府と福井県の一部で使われるハゼの実の別名「サツマの実」に似ていることから名づけられた)に対し、腹部の側面が暗褐色をしていることから「脇黒」とつけられている。
樹木や草の間に円形の網を張るが、夜行性で昼間は網の近くの葉の裏などに隠れていることが多い。
体長|メス約7~10ミリ、オス約6~8ミリ
季節|7~9月頃 -
本州、四国、九州と、南西諸島に分布。
平地から山地の雑木林や緑地などに生息し、人家や公園などでもよく見られる。
メスは腹部に黄色と暗青色のしま模様があり、成体では腹部の末端が赤くなる。
オスはメスに比べてかなり小さく、体色は赤褐色。
メスの派手な体色などから毒があるように思われていることもあるが、人体に影響するほどの毒はない。
樹木の枝の間などに円形の網を張る。
かなり離れた木の間に網を張ることがあり、また網の前後にも糸を張るので、気づかずに網をかぶってしまうことがある。
成体で網を作るのはメスのみで、オスはメスの張った網を訪れ、ときに多数が同居することもある。
体長|メス約20~30ミリ、オス約6~10ミリ
季節|9~11月頃 -
北海道、本州、四国、九州に分布。
平地から山地の雑木林や緑地、都市部の公園などに生息する。
5ミリほどの小さなクモで、あまり日の当たらない林内や下草の間などを好む。
体色は明るい褐色で、腹部に白い斑点が並ぶ。初夏のころから姿を見せ、植物と植物の間などを使い、地面に対してややななめになった円形の網を張る。
網の中心部には白いうず巻き状の模様(隠れ帯)があってよく目立つが、クモ自身の姿はわかりにくくなる。
「渦(うず)グモ」の名もこれが由来となっている。
体長|メス約4~6ミリ、オス約4~5ミリ
季節|6~8月頃 -
本州、四国、九州と、西表島に分布。
平地から山地の樹林や崖地、洞窟などに生息する。
日本産のクモのなかでは大型で、体色はくすんだ茶褐色から暗褐色。
腹部の後方に白または黄色の三角形の模様がある。8本の脚には中央が白い黒色の斑点が複数並ぶ。
よく似たアシダカグモが、家屋内などに棲みつくことが多いのに対し、野外で過ごす傾向が強い(灯火に集まる昆虫を求めて、建物内に入ることはある)。
日中はたいてい樹皮下の隙間や岩の陰などに身を潜めており、夜になると活動をはじめ、ガやゴキブリなどの昆虫を捕らえて食べる。
網を張るのではなく、歩き回って獲物を求める。
体長|メス約20~25ミリ、オス約16~20ミリ
季節|通年 -
北海道、本州、四国、九州に分布。
平地から山地の沢沿いの林や草むら、崖地、水田の周辺などに生息する。
メスの成体は日本産のクモのなかではかなりの大型で、体色は青みがかった暗褐色。
腹部の後方はやや明るい褐色で、脚には白い斑点が規則的に並ぶ。
巣をはって獲物をとらえるのではなく、いろいろな場所を歩き回りながら、獲物を求める。
地表や植物の上で待ち伏せし、近くにきた昆虫などを捕らえて食べる。
メスは産んだ卵を糸でくんで球状にし、腹部にかかえて持ち運ぶ。
体長|メス約22~27ミリ、オス約12~15ミリ
季節|6~9月頃 -
北海道、本州、四国、九州に分布。平地から山地の樹林、雑木林、緑地などに生息する。
その名のとおり、頭胸部から腹部にかけての背面に赤褐色の太いすじが入っており、その両側は白くふちどられる。
ふだんは巣をはることはなく、草や樹木の葉の上などにいて、アブやハエなどの昆虫が寄ってくるのを待ち伏せし、すばやい動きで捕らえて食べる。
メスはボール型の卵のうを口器で抱えるように持ち運び、ふ化が近くなると不規則な網をはって、その中でしばらくの間、子グモの面倒を見る。
体長|メス約11~15ミリ、オス約10~11ミリ
季節|7~10月頃 -
本州、四国、九州と、南西諸島に分布。
低山地から山地の雑木林や緑地などに生息する。
腹部が非常に細長く、一般的なクモの姿からはかけ離れている。
春先から夏にかけて里山や森林内でよく見られるが、脚を伸ばすと1本の棒のようになり、クモだと気づかれないことも多い。
昆虫のナナフシとカン違いされることもあるが、ナナフシのような体節はない。
体色は緑色になるものと褐色になるものの2タイプがいる。
性質も少し変わっていて、枝の間などに数本の糸をひいただけの簡易な網を張り、そこに糸をつたってやってきたほかのクモをすばやく捕獲して食べてしまう。
大きさ|メス約20~30ミリ、オス約12~25ミリ
季節|5~8月頃 -
北海道、本州、四国、九州に分布。平地から山地の雑木林や緑地に生息する。
都市部でも植物の多い場所でよく見られる。
体色はその名が示すように、若葉のような鮮やかな緑色。姿を見せるのも、5~6月の若葉のころからが多くなる。
成熟したオスは頭胸部の前方や脚の基部が赤みがかる。
メスは全身が緑色のまま。日中に、樹木や草の葉の上で獲物を待ち伏せし、近くにきたハエやハムシなどの小型の昆虫を捕らえて食べる。
前のニ対の脚が長く、それを左右に大きく広げた姿がカニを思わせることから「カニグモ科」というグループに分類されるが、その多くの種類は腹部がまるい形をしているのに対し、腹部が細長い。
体長|メス約9~12ミリ、オス約7~11ミリ
季節|4~10月頃 -
北海道、本州、四国、九州に分布。
平地から低山地の雑木林や緑地に生息する。
都市部の人家の庭先や公園などでもふつうに見られるクモのひとつ。
餌を求めて家の中に入ってくることもある。
体長1センチに満たない大きさで、オスは頭胸部が黒く、腹部は茶褐色で中央に黒い模様が入る。
メスは体全体が明るい褐色の毛でおおわれている。
地表や草の上を歩きまわり、ときにピョンと跳ねながら移動して、餌となる昆虫などを探す。
網は張らないが、移動の際には糸を出しており、高い位置からぶら下がったり、たぐって元の場所に戻ったりする。
「ハエ捕り」の名のとおり、ハエなどの小型昆虫を捕らえて食べる。
体長|メス・オスとも約7~8ミリ
季節|4~8月頃 -
北海道、本州、四国、九州と、南西諸島に分布。
平地から山地の林や緑地に生息する。
体色は黒褐色か赤褐色で、姿や動きがアリにそっくりなことから、この名前がある。
よく見ると、アリは脚が三対なのに対し、クモは四対なので区別できるが、第一脚を触角のように見せかけることもあり、なかなか難しい。
網は張らず、ふだんはさまざまな樹木や草花の葉の上を歩きまわりながら、小型の昆虫を捕らえて食べる。
危険を察知すると葉から跳びおりて、茂みなどに隠れる。
オスは成熟するにしたがって、上あごが大きく発達し、前に突き出して目立つようになる。
メスは葉の裏に糸で産室を作り、卵を産む。
体長|メス約7~8ミリ、オス約5~6ミリ
季節|6~8月頃 -
北海道、本州、九州に分布。低山地から山地にかけての森林中に、比較的ふつうに生息している。
ザトウムシは豆粒のような体と、不釣り合いなほどに長い8本の脚を持つ生き物で、クモの仲間だと思われることが多いが、頭胸部と腹部のあいだにくびれがなく(体がひとつに見える)、糸を出すこともない。
眼は2個ある。オオナミザトウムシは脚を広げると大人の手のひらよりも大きく、若い個体では体の横しま模様がはっきりしているが、成熟すると白い腹面以外はほぼ全体が黒くなる。
高尾山ではほぼ全域で、樹幹や草の上でよく見られる。
晩秋には寄り添っている雌雄や、地表をよろよろと歩く姿をよく見かける。
小さな昆虫やミミズ、地表に落ちて発酵した水気の多い果実などを食べる。
体長|約6~12ミリ
季節|7~11月頃 -
本州、四国、九州と、屋久島などに分布。
低山地から山地にかけての森林にふつうに生息。
体色は地域によって大きく違いがあるが、高尾山を含め関東地方で見られるものは体全体が赤さび色となる「関東型」。
背面はやや黒く、そのほぼ中央に1本の黒くて長い針状のとげをもつのが特徴。
成体は7月から出現し、盛夏に林内の樹幹や草の上を歩いている姿をよく見かける。
高尾山にいるザトウムシではオオナガザトウムシも背に1本のとげをもつが、こちらは体長が7~10ミリで、体は細長くて全体が黒く、アカサビザトウムシよりも体に対して脚が太く短めなので区別できる。
どちらも、背のとげは幼体には見られない。
体長|約4~6ミリ
季節|7~10月頃 -
北海道、本州、四国、九州に分布。
平地から山地にかけての森林の樹幹や草の上、笹原などに見られる。
体が小さくきゃしゃに見えるが、他のザトウムシよりもやや乾燥に強く、雑木林などの二次林的な環境によく出現する傾向がある。
体は丸く、若いときには美しい黄緑色(もえぎ色)だが、やがて明るい褐色となる。
脚は暗褐色で、関節の近くが白く、暗い林内などを歩いていると体と脚の白い部分だけが目立つ。
まれに1本の短いとげをもつ場合もある。モエギザトウムシとオオナミザトウムシ、アカサビザトウムシの長脚のザトウムシ3種はいずれも年に1回発生し、地中に産み付けられた卵で越冬する。
幼体は春から出現するが、はじめは地表近くの落葉層で過ごすので目につきにくい。
成長につれて樹幹や草の上にあがり、登山中に見かける機会も増える。
体長|約3~4ミリ
季節|8~11月頃 -
本州、四国、九州に分布。平地から山地のあまり日の当たらない雑木林や緑地に生息する。
住宅地近くにも多く、人家にはいってくることもある。
体色は暗緑色で、頭部と胴がほぼ同じ色。
脚は黄褐色から赤色で、先端付近はやや緑色がかる。
昼間は倒木の陰や草が生い茂った場所の土中、落ち葉や石の下などに隠れていることが多いが、まれに葉や枝の先にいることもある。
夜になると活動をはじめ、ゴキブリやコオロギなどの昆虫やクモを鋭い牙でとらえて食べる。
牙には毒があり、咬まれると激痛が走り、腫れてしまうので注意が必要である。
地面に置いた荷物の下にもぐりこむこともある。
メスは卵を腹部に抱えて保護し、子供が自力で餌を捕獲できるまで守り続ける習性がある。
体長|約75~100ミリ
季節|7~9月頃 -
本州、四国、九州に分布。
平地から山地のあまり日の当たらない雑木林や緑地に生息する。
朽ち木(くちき)や落ち葉の下など、湿りけのある場所を好み、都心部でも、樹木の多い公園や神社によくいるヤスデの仲間だが、あまり知名度がないためダンゴムシと混同されていることが多い。
体色は光沢のある黒褐色で、体節ごとにふちが白く、全体としてしま模様となっている。
敵に襲われたりすると体を丸め、頭部も隠して完全な球形になることからその名がある。
球形になることではダンゴムシの方が有名だが、ダンゴムシは体を丸めたときに頭が完全に隠れることはない。
ほかのヤスデ類と同様に、ひとつの体節に二対4本の脚を持つ。高尾山では落ち葉がつもった場所に多く、腐葉土に含まれる腐植物を食べる。
体長|約7~8ミリ
季節|3~11月頃 -
本州、四国、九州と、佐渡島、隠岐島、種子島、屋久島などの島に分布。
低山地から山地の渓谷や沢、岩や倒木の多い湿地などに生息する。
河川の上流域から中流域の清浄な水辺を好む淡水性のカニで、水中の小石の下や朽ち木の陰などに潜む。
体色は紫黒色、赤褐色、灰青色の3型があり、地域によって異なる。
高尾山で見られるものは背の甲らが褐色ではさみ脚が濃い
橙黄色(とうこうしょく:赤みがかった黄色)になるものが多い。
ほぼ夜行性だが、雨やくもりの日には水辺からはなれた登山道を歩いていることもある。
雑食性で、小型の昆虫やカタツムリ、ミミズ、水辺の植物や落ち葉などを食べる。
メスは夏に50粒ほどの卵を産み、卵を腹部にかかえて、子ガニがふ化するまで保護する。
冬が近くなると、流れの中の石の下にもぐり、そこで越冬する。
体長|約20~30ミリ(甲らの幅)
季節|3~11月頃 -
本州に分布。低山地から山地の水辺に近い森林に生息する。
大きいものでは、体を伸ばしたときの体長が40センチ以上にもなる大型の陸性のヒル。
クガは「陸上」を意味する古い言葉で、ヤツワは体の中央部の体節(体を構成する、構造上のまとまり)の表面が、八つの輪(体表にあるしわ)に分かれていることに由来する。
体色は生息地により違いがあるが、高尾山で見られるものはオレンジがかった黄色で、背面中央に黒い模様が入る。
適度に湿りけのある場所を好み、渓流沿いの石の下や落ち葉の下などによくいる。
雨の日や地表がぬれているときなどは、林道に出てくることも多い。
肉食性で、ミミズを主な餌にしており、自分よりも大きいミミズでも、先端部にある口から丸飲みにしてしまう。
一般に知られるヒルとは違い、血を吸うことはないので人間に対しての害はない。
体長|約10~40センチ
季節|通年