植物図鑑
暖温帯と冷温帯、それぞれに分布する植物が混在して生育する高尾山。自生する植物の種類が多く、四季折々のさまざまな姿を楽しめます。1600を超える種類の植物が確認されており、その数はイギリス全土で自生する種類の数に匹敵。高尾山で最初に発見された植物も多く、その数はタカオスミレ、タカオヒゴタイなど60数種類にものぼります。
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山地の明るい林の下やふちに生える越年草(秋に発芽し越冬して翌年に花が咲く植物)で、平地でも普通に咲いている。ケマン(華鬘)とは、仏壇に飾る花輪をかたどった仏具のことで、花の姿が似ていることから、その名が付けられた。全体がやわらかく、傷つけるとやや悪臭がある。根生葉(こんせいよう:茎の根もと近くから生える葉)が地をはうように広がり、冬を越す。春になると茎をのばし、その先に長さ約1.5センチの花をたくさんつける。花は紅紫色で、ヤマエンゴサクやジロボウエンゴサクとよく似ているが、葉がニンジンの葉のような細かな切れ込みがあるので見分けがつく。全体に毒を含み、誤って食べると嘔吐(おうと)などをひきおこす。高尾山で見られるウスバシロチョウの幼虫はこの葉を食べる。
季節|4月上旬~5月中旬頃
高さ|約20~50センチ
場所|1号路、3号路、稲荷山、裏高尾、奥高尾、南高尾 -
山野の明るい林のふちや林内に生えている多年草(複数年のあいだ育成する植物)。高尾山では、沢沿いなど湿り気のある場所に多く見られる。早春にとんがり帽子のような形の花を咲かせる。花の長さは約2センチで、色は赤紫色から青紫色。標高が高いところや北へいくほど青みが強くなる。苞葉(ほうよう:花のつけねにある葉が変形したもの) に切れ込みがあり、よく似るジロボウエンゴサクの苞葉には切れ込みがないことで、両者を区別できる。葉は 三出複葉( さんしゅつふくよう)で、長い柄(え)から小さな葉が3枚ひと組でつく。葉の形は、鳥の足のように3つに分かれている。地中にある小さな茎は「延胡索(えんごさく)」という漢方薬になり、痛みやけいれんを和らげる効能がある。
季節|3月下旬~4月中旬頃
高さ|約10~20センチ
場所|裏高尾、北高尾 -
やや湿り気がある林の下に生えている多年草(複数年のあいだ育成する植物)。群生することが多く、鮮やかな黄色の花がいっせいに咲いた姿はひときわ目立つ。花の形がバラ科の樹木であるヤマブキに似ていることから「山吹草」の名が付いた。別名は「クサヤマブキ」という。花の直径は約5センチで、花びらは4枚。ヤマブキは5枚ある。全体がやわらかく、茎を傷つけると黄色い汁がでる。根もとからのびる根生葉(こんせいよう:茎の根もと近くから生える葉)は、長い 柄(え)に5または7枚の小さな葉がついている。葉の形は卵形から楕円形で、ふちに細かい鋸歯(きょし:葉のふちにあるノコギリの歯のようなギザギザ) がある。茎につく葉は上部に3枚が開く。花のあとは、約3センチの細長い実がつき、夏になると地面上にある部分は枯れてしまう。
季節|4月下旬~5月中旬頃
高さ|約30~40センチ
場所|南高尾 -
山地の林のふちや林内に生える多年草(複数年のあいだ育成する植物)。花の形が船のイカリに似ていることから「錨草(または碇草)」の名が付いた。花は直径約2センチの淡い紅紫色で、茎の先に長い距(きょ:花びらの後方にある袋状の部分)をもつ4枚の花びらが開く。距は長さ1.5~2センチで蜜を蓄える。葉は長さ3~8センチのゆがんだ卵形で、ふちにとげ状の鋸歯(きょし:葉のふちにあるノコギリの歯のようなギザギザ) がある。葉柄(ようへい:葉をささえる柄)の先が3つに分かれ、それぞれがさらに3つに分かれて葉をつけるので「三枝九葉草(さんしくようそう)」とも呼ばれる。地下茎(ちかけい)は横にはって、ひげのような根を出す。昔から根は強壮薬として用いられている。花が終わると豆のさやのような実をつける。種にはアリが好む白い種枕(しゅちん)という脂肪質の塊があり、種を運んでもらう。
季節|4月中旬~5月中旬頃
高さ|約20~40センチ
場所|奥高尾 -
早春に山地の明るい林や草地などに生える多年草(複数年のあいだ育成する植物)。春の訪れを告げる花のひとつとして知られ、沢沿いの落葉樹林のふちに多く見られる。花の直径は約3~4センチ。陽光を浴びて、茎の先に白い花を一輪だけ咲かせる。関東地方に多く、花が1つということから「東一華(あずまいちげ)」の名が付いた。花びらに見えるのは萼片(がくへん)で、裏側は少し紫色をおびている。葉は 三出複葉(さんしゅつふくよう)といって、小さな葉が3枚ひと組でつく。葉の大きさは約2~3センチで先は丸みがある。やわらかく、だらりと垂れているところが特徴である。春先に同じような場所に咲くキクザキイチゲと似ているが、こちらの葉はふちがギザギザしているので見分けがつく。
季節|3月下旬~4月中旬頃
高さ|約10~15センチ
場所|裏高尾、南高尾 -
山地の明るい林のふちや沢沿いの草原など、湿り気のあるところに生える多年草(複数年のあいだ育成する植物)。1本の茎の先に大きな白い花を一輪咲かせることから「一輪草」の名が付いた。まれに二輪咲くことがあり「ニリンソウでは」と迷ったときは、葉が細かく裂けていて、花が大きいところが見分ける際のポイントになる。花の直径は約4センチで、存在感がある。5~6枚の花びらに見える萼片(がくへん)が開いている。多くは白色だが、ときどき裏側が淡い紫色をしたものが見られることから「ウラベニイチゲ」の別名もある。長い柄(え)がある3枚の葉が、茎の途中からついている。葉は細かな切れ込みがたくさんあり、ギザギザとした形が特徴である。
季節|4月中旬~5月中旬頃
高さ|約15~20センチ
場所|裏高尾、南高尾 -
日当たりのよい山野の道端に生える多年草(複数年のあいだ育成する植物)。名前の由来は、根もとから出る根生葉(こんせいよう:茎の根もと近くから生える葉)の形が「馬の足形」に見えることによるとされるが、実際はあまり似ていないという声もある。根生葉は長い柄(え)があり、3~5つに分かれた葉がついている。どちらかというと人の手の平の形に近い。最近は、別名である「キンポウゲ」で呼ばれるほうが多い。花の直径は約2センチで、光沢がある黄色い5枚の花びらが上を向いて開く。茎や葉の柄に開出毛(かいしゅつもう)という、外側に向かって立つような毛が生えているところが特徴である。有毒成分が含まれ、誤って食べると中毒をおこすので要注意。汁に触れただけでも皮ふがはれることがある。
季節|4月~5月頃
高さ|約30~60センチ
場所|5号路、稲荷山、奥高尾 -
林や沢沿いの湿り気のあるところに生える多年草(複数年のあいだ育成する植物)。高尾山では数が少なく、アズマイチゲより少し遅れて咲く。花がキクに似ていることから「菊咲一華(きくざきいちげ)」の名が付いた。花の直径は約3センチで一輪だけ咲く。別名は「キクザキイチリンソウ」。花柄(かへい)という花をつける柄(え)に細かい毛が生えている。花びらに見えるのはすべて萼片(がくへん)。白色から濃い紫色までさまざまな色のものがあるが、東京に自生するものは白色が多い。花は晴れていないときは咲かずに閉じている。上にある樹木が茂るとすぐに枯れてしまうデリケートな植物である。葉は三出複葉(さんしゅつふくよう)【葉柄に三枚ひと組の小葉(しょうよう:複数の葉で構成される葉形のひとつひとつの葉のこと)をつける葉の形状】で深い切れ込みがあり、ふちがギザギザしている。花の下で水平に広がる。
季節|3月下旬~4月中旬頃
高さ|約10~15センチ
場所|裏高尾 -
山地の沢沿いの道端や林のふちなど、やや湿ったところに生えている多年草(複数年のあいだ育成する植物)。全体に無毛で、やわらかい感じの植物である。花が終わると緑色の細長い実が2つ、対になってつく。これが鯖の尾のようだということと、関東地方に多いことから「東国鯖の尾(とうごくさばのお)」の名が付けられた。花の直径は約6~8ミリで、淡いクリーム色をしている。花びらに見える萼片(がくへん)の内側には、軍配のような形をした黄色い花弁がある。葉は淡い緑色で、根もとには数枚の根生葉(こんせいよう:茎の根もと近くから生える葉)がつく。茎には、3枚から5枚の小さな葉が対になって開いている。葉の形はうちわのようで、ふちににぶい鋸歯(きょし:葉のふちにあるノコギリの歯のようなギザギザ)がある。夏になると根もとにつぼみのような閉鎖花(へいさか:開花せずに受粉を行なう花) をつける。
季節|4月上旬~5月上旬頃
高さ|約10~15センチ
場所|裏高尾、南高尾 -
山地の明るい林のふちや林内、沢沿いの草原などに生えている多年草(複数年のあいだ育成する植物)。1本の茎に2個の白い花をつけることが「二輪草」の名の由来だが、実際には1輪や3輪のものも多く見られる。少し湿ったところを好み、水辺に近い林などではよく群生する。新緑の頃、あたり一面を白く覆い尽くす光景はとても美しい。花の直径は約2センチで、葉の間からのびた2本の花柄(かへい:花をささえる柄) の先端で咲く。イチリンソウと比べると、ずっと小さく感じる。花びらに見える5枚の萼片(がくへん)があり、主に白色だが、なかには薄紅色や緑色のものがある。また、萼片が9枚のものなど、変化に富んでいる。茎の途中から柄(え)のない3枚の葉を出すことが特徴である。
季節|4月上旬~5月上旬頃
高さ|約15~20センチ
場所|1号路、6号路、蛇滝、裏高尾、奥高尾、南高尾、北高尾 -
山麓の道端や草地、石垣の隙間など、日当たりのよいところに生えている多年草(複数年のあいだ育成する植物)。ウズ(烏頭)とはトリカブトのことで、葉の形がよく似ており、背丈が小さいことから「姫烏頭(ひめうず)」の名が付けられた。ひょろひょろとのびた茎の先に、やや紅色をおびた白い小さな花をつける。花の直径は約5ミリで、おじぎをするように下を向いて咲くところが特徴である。花びらに見える萼片(がくへん)の内側には、黄色い花弁が筒状に並んでいる。根もとからのびた長い 柄(え)につく根生葉(こんせいよう:茎の根もと近くから生える葉)は、地面一面に広がるように開く。茎につく葉には、細かな毛が密生している。花が終わると、茎は立ちあがり果実をつけ、熟すと縦に割れて種を散らす。
季節|3月下旬~5月上旬頃
高さ|約10~20センチ
場所|裏高尾、南高尾 -
沢沿いの林のふちや林内、林道のふちなど、湿った日陰に生える多年草(複数年のあいだ育成する植物)。ハコベの仲間のなかでは、特に花が大きい種類である。白い花が上を向いて開いているので、とてもよく目立つ。花の直径は約1~1.5センチで、葉のつけねからのびた柄(え)の先に1個つく。花びらの数は5枚だが、それぞれが深く2つに裂けているので10枚あるように見える。花のもとにつく萼片(がくへん)はとがり、外側に白く長い毛が生える。葉は長さ約1~3.5センチの広い卵形で、トランプのスペードのよう。葉の裏面には、葉脈に沿ってうぶ毛が生える。茎の下の方につく葉には長い柄がある。茎は毛が二列に生えているのが特徴で、地をはうように広がる。
季節|4月下旬~6月下旬頃
高さ|約20~30センチ
場所|裏高尾 -
山地の林の中に生えているつる植物。低い木にからみついて、楽器のサキソフォンのように見えるユニークな花を咲かせる。果実がウマノスズクサに似て、葉が大きいことから、その名が付いた。花は黄色で花びらはなく、萼片(がくへん)が筒状になったもの。内側には紫色のしま模様が見える。葉は広く、約8~15センチ。ハートのような形で、厚みがあり、裏面はやや白く見える。やわらかい毛が生えているが、表面の毛は後でなくなる。有毒成分が含まれているが、ジャコウアゲハという蝶の幼虫は、毒を体にためて外敵から身を守るためにその葉を食べる。秋に実は黒く熟し、割れると種がぎっしり入っているのがわかる。
季節|5月上旬~5月下旬頃
高さ|―(つる性木本)
場所|北高尾 -
丘陵から山地にかけての林に生えている常緑の多年草(複数年のあいだ育成する植物)。最初に多摩丘陵で見つかったことから「多摩の寒葵(かんあおい)」の名が付けられた。高尾山が分布の西限にあたるが、その数は少なく貴重な植物のひとつである。やや厚みのある葉は、なめし皮のような光沢があり、葉脈の部分がへこんでいる。大きさは約5~10センチで、楕円形に近いハート形をしている。葉は長い柄(え)があり、そのつけね部分に直径約4センチの暗い紫色をした花をつける。柄につながっている部分は地中にあるため、花だけが地面に落ちているように見える。ほとんど土に埋もれるように咲き、落ち葉に覆われていることも多いため、あまり目立たない。
季節|4月中旬~5月中旬頃
高さ|約10センチ
場所|いろは -
山地の林の下に多く見られる多年草(複数年のあいだ育成する植物)で、茎が地をはうようにのびて群生している。茎の先から長い柄(え)を出して、2枚のハート形の葉が対になって開く。徳川家の紋所のデザインは、この葉3枚を組み合わせたものである。また、京都賀茂神社の葵祭りに用いられることから「賀茂葵(かもあおい)」の別名もある。葉の大きさは約4~8センチで、両面に白く短い毛が生えている。呼び鈴のような形をした約1.5センチの花が、うつむくように下を向いて咲く。花びらは無く、萼(がく:花の外側にある、葉の変化した器官)が外側に反り返っているところが特徴である。色は紫がかった茶色で、外側は白い。葉のもとの部分に1個だけつけるので、葉に隠れてしまい見つけにくい。
季節|4月上旬~5月中旬頃
高さ|約8~15センチ
場所|裏高尾 -
沢沿いの道端や斜面など、湿ったところに群生する多年草(複数年のあいだ育成する植物)。ウワバミ(大きな蛇)が住んでいそうな場所に多く生えることから、その名が付いた。また、茎に水分を多く含んでいることから「ミズ」や「ミズナ」とも呼ばれ、人気のある山菜のひとつとしても知られる。茎は赤みをおびて、左右非対称の葉がつく。葉は約4~10センチで、先が尾のようにのびた楕円形をしている。両面には毛が生え、ふちに大きめの鋸歯(きょし:葉のふちにあるノコギリの歯のようなギザギザ) がある。葉のつけねから短い柄(え)を出し、淡い黄緑色の小さな花がかたまって咲く。雄花は柄の先につき、雌花は葉のつけねにつく。秋には栄養分を蓄えた芽が球状になる「むかご」ができる。
季節|4月下旬~6月上旬頃
高さ|約20~30センチ
場所|1号路、3~4号路、6号路、裏高尾 -
山の木陰で地面に広がるように群生している多年草(複数年のあいだ育成する植物)。春の早い時期に淡い紫色をおびた細かい花が咲く。顔を近づけて見ないと、咲いているのかどうかわからないくらい、小さく目立たない花である。植物の多くは昆虫に花粉を運んでもらうために、より目立つようにと、さまざまな花を咲かせる。その点カテンソウの場合は、昆虫に頼らずに、花粉を風で飛ばして運ばせるため、わざわざ目立つ花を咲かせる必要がないと考えられている。花は雄花と雌花があり、茎の上部に雄花がかたまって咲く。雌花は葉のつけねについている。葉の大きさは約3センチで、三角形に近い卵形。光沢があり、ふちに大きめの鋸歯(きょし:葉のふちにあるノコギリの歯のようなギザギザ)がある。
季節|3月~4月頃
高さ|約10~30センチ
場所|1号路、3~4号路、6号路、裏高尾、奥高尾 -
山麓から山の上までの林下や草原に生える多年草(複数年のあいだ育成する植物)。茎の上部に4枚の葉が茎をかこむようについており、その中心から1本の白い花序(かじょ:花をつけた茎)が立っている。その姿を優雅に舞う静御前(しずかごぜん)にたとえて「一人静」の名が付けられた。花序の長さは3センチほどで、白いブラシのようである。白く見えるのはすべて雄しべで、花びらも萼(がく:花の外側にある、葉の変化した器官)もついていないところが特徴である。茎は真っすぐに立ち、のびはじめのころは赤紫色を帯びているものが多い。葉は長さ約6~10センチの先がとがった楕円形で、光沢がある濃い緑色をしており、ふちには鋭い鋸歯(きょし:葉のふちにあるノコギリの歯のようなギザギザ)がある。花が終わると、直径約2.3~3ミリの球形の実をつける。
季節|4月上旬~5月上旬頃
高さ|約10~15センチ
場所|裏高尾、奥高尾、南高尾 -
山地の林のふちや林内に生える多年草(複数年のあいだ育成する植物)。2本の花序(かじょ:花をつけた茎)を立てることから、ヒトリシズカに対して「二人静(ふたりしずか)」の名が付けられた。茎の上部に二対の葉4枚が、やや間隔をあけてつき、その中心から小さな白い花をつけた長さ約2~5センチの花序がのびる。多くは2本を出すが、なかには3~5本も立てるものがある。白く見えるのはすべて雄しべで、花びらも萼(がく:花の外側にある、葉の変化した器官) もついていない。雄しべはヒトリシズカのような糸状ではなく、3本の雄しべが雌しべを包んだ米粒のような形をしている。葉は長さ約8~16センチの楕円形で、光沢はなく、ふちに細かいとげ状の鋸歯(きょし:葉のふちにあるノコギリの歯のようなギザギザ)がある。夏から秋にかけて、閉鎖花(へいさか:開花せずに受粉を行なう花) をつけた花序を出す。
季節|5月下旬~6月下旬頃
高さ|約30~50センチ
場所|3号路、裏高尾、奥高尾 -
雑木林や竹林の中などに生える多年草(複数年のあいだ育成する植物)。まっすぐにのびた茎の上部に10~20個の花がやや間隔をあけてついている。近年、園芸目的の盗掘(とうくつ)で数が減ってしまっている。地下茎(ちかけい)は球状になった節が連なり、それが体を曲げたエビのように見えることから「海老根」の名が付けられた。花の直径は約2~3センチで、3枚の花びらと3枚の萼片(がくへん)からなる。一番下の花びらは大きく分裂し、普通は淡い紅色か白色。花びらと萼片はこげ茶色だが、個々の差が多い。根生葉(こんせいよう:茎の根もと近くから生える葉)は長さ約10~30センチ、幅約5~8センチの長い楕円形で、根もとから3~5枚出て、茎を包むように上にのびる。葉は冬も残り、開花時期に新しい葉が出ると枯れる。
季節|4月中旬~5月中旬頃
高さ|約30~40センチ
場所|奥高尾 -
山地や丘陵の明るい雑木林の中に生える多年草(複数年のあいだ育成する植物)。雑木林の減少とともに数は減っており、高尾山でもなかなか見られなくなったランのひとつ。鮮やかな黄色の花を咲かせることから「金蘭」の名が付けられた。花の直径は約1~1.5センチで、茎の先に3~12個がやや上向きにつく。完全に開くものは少なく、半開きの花が多い。花びらと萼(がく:花の外側にある、葉の変化した器官)の色と形はほぼ同じ。一番下につく花びらはつけねの部分が筒状で、内側には 隆起線(りゅうきせん)と呼ばれるこげ茶色の出っ張りが5~7個ある。葉は笹の葉に似て、長さ約8~15センチ、幅約2~4.5センチ。縦方向にしわがあり、茎を抱くように互い違いにつく。地下茎(ちかけい)は地中に深くのびる。
季節|4月下旬~5月下旬頃
高さ|約30~60センチ
場所|裏高尾、奥高尾 -
山地や丘陵の明るい雑木林の中に生える多年草(複数年のあいだ育成する植物)。高尾山ではまれにしか見ることができない希少種。黄色い花のキンランに対して白い花をつけることから「銀蘭」の名が付いた。花の直径は約1.5~2センチ。茎の先に5~10個つけ、こちらも花びらは半開きの状態であることが多い。花びらと萼(がく:花の外側にある、葉の変化した器官)は3枚ずつあり、中央につく花びらの内側には淡い黄色の 隆起線(りゅうきせん) がある。葉は笹の葉に似た形で、長さ約3~8センチ、幅約1~2.5センチ。5~6枚の葉が茎を抱くように互い違いにつく。よく似るササバギンランは、花の下につく苞葉(ほうよう:花のつけねにある葉が変形したもの)が花よりも高くのびる。ギンランの苞葉は短く、また背丈が低いところも見分けるときのポイントになる。
季節|5月上旬~5月下旬頃
高さ|約10~30センチ
場所|5号路 -
明るく乾燥した雑木林などに生えている多年草(複数年のあいだ育成する植物)。本種も高尾山で数が少なくなったランのひとつ。漢字で「春蘭(しゅんらん)」と書くように、ランのなかでは最も春早くに咲く。花の直径は約3~3.5センチで、花茎(かけい:葉をつけずに花だけをつける茎)の先に普通1個つける。花びらの側弁と萼片(がくへん)は黄緑色。一番下につく花びらにある濃い赤い斑点がホクロやシミにみえることから「ホクロ」「ジジババ」とも呼ばれる。花茎は半透明の鱗片(りんぺん:葉が変形してうろこ状になったもの)に包まれ、やわらかい質感で太い。葉は細長く、長さ約20~35センチ、幅約0.6~1センチ。触るとかたく、ざらざらとしていて、ふちに鋸歯(きょし:葉のふちにあるノコギリの歯のようなギザギザ)がある。1年中、緑色の葉が根もとからたくさん出ているので、春早い時期でもよく目立つ。
季節|3月下旬~4月下旬頃
高さ|約15~25センチ
場所|5号路、稲荷山、裏高尾、奥高尾、南高尾 -
沢沿いなど湿り気のある場所の樹木や岩の上などに着生する常緑の多年草(複数年のあいだ育成する植物)。高尾山ではスギの老木の上などに着生し、美しい花を咲かせている。葉の落ちた茎の節から花柄(かへい)を出し、1~2個の花をつける。花の直径は約3~4センチで、白色から淡いピンク色。甘い香りがある。一番下の花びらは、根元の部分の内面に短い毛が生えている。葉は細長く、長さ約3~5センチ。厚く光沢があり、2~3年は茎についている。茎はもとの部分から束になって出ており、縦にすじが入り、たくさんの節をもつ。漢字で「石斛(せっこく)」と書き、健胃、消炎、強壮効果などがあることから、漢方薬として用いられている。
季節|5月中旬~6月下旬頃
高さ|約10~30センチ
場所|1号路、6号路 -
山麓から頂上にかけて、沢筋、林の中やふちなど、うす暗いところに生えている常緑の多年草(複数年のあいだ育成する植物)。種をつくることができないため、根茎をどんどんとのばして、ふえていく植物である。その特徴を利用して、土手道などの土留めによく植えられている。花の直径は約4~6センチで朝開いて夕方にしぼむ。花びらのふちには細かい切れ込みがある。全体に淡い紫色で、外側の花びらの中央部に入る紫色とオレンジ色の模様が美しい。花の期間が長く、群生して咲いているのでよく目立ち、高尾山でもあちこちで見ることができる。葉は剣形で、長さは約30~60センチ。つやつやとした光沢がある、鮮やかな緑色をしている。
季節|4月中旬~5月下旬頃
高さ|約50~60センチ
場所|1~6号路、稲荷山、蛇滝、裏高尾、いろは、奥高尾 -
山野の日当たりのよい林内や草地、道端などに生える多年草(複数年のあいだ育成する植物)。太い地下茎がオニドコロ(サトイモ科)に似て、味が甘いことから、その名が付けられた。茎には上下に走るすじがあり、角ばっているところが特徴で、ナルコユリと区別できる。葉は長さ約5~10センチ、幅約2~5センチの長い楕円形で、裏面は粉をまぶしたように白い。葉のつけね部分から1~2個の花が真下に垂れる。花は長さ約1.5~2センチの筒状で、花びらの先は黄緑色をおびる。葉の先が巻いている時期の若芽は、天ぷらやおひたしなどで食することができ、歯ごたえと甘みがあっておいしい。乾燥させた地下茎(ちかけい)は、強壮薬として用いられている。
季節|5月上旬~下旬頃
高さ|約30~60センチ
場所|1号路、4号路、蛇滝、裏高尾、奥高尾 -
沢沿いの湿った林のふちや木陰に生える多年草(複数年のあいだ育成する植物)。まっすぐにのびた茎に、大きな葉がマントを羽織るようについている姿が印象的。その中心から小さな花がつき出すように1つ咲く。花の色は緑色からこげ茶色と変化があり、高尾山では緑色のものが多い。花びらはなく、長さ約1.5~2センチの萼(がく:花の外側にある、葉の変化した器官)が開いている。葉は長さ、幅とも約10~15センチの先が少しとがった広い卵形で、3枚の葉が茎をとりかこむようにつく。中国で地下茎(ちかけい)を乾燥させ「延齢草根(えんれいそうこん)」という漢方薬として用いてきたことからその名が付けられたが、全草に有毒成分が含まれており、誤って食べると激しい嘔吐などの症状をひきおこすので注意が必要である。
季節|4月上旬~5月下旬頃
高さ|約20~40センチ
場所|1号路、裏高尾 -
日当たりのよい落葉広葉樹林の中に生える多年草(複数年のあいだ育成する植物)。南高尾梅ノ木平に群生地がある。木々が芽吹く前の林に生え、他の植物が茂る前に姿を消す植物のことを春植物(スプリング・エフェメラル)と呼び、その代表的な山野草のひとつである。葉は長さ約6~12センチの長い楕円形で、長い柄(え)があり、通常2枚つく。厚みがあってやわらかく、表面には普通は紫色の斑紋がある。花茎(かけい:葉をつけずに花だけをつける茎) の先に淡い紅色の花が1つ下向きにつく。花びらは6枚あり、長さ約4~5センチ。上方に大きくそり返る。万葉集でうたわれた「かたかごの花」の呼び名が「片栗」の名の由来である。地下茎(ちかけい)はデンプンを多く含んでいて、昔は片栗粉がつくられた。
※ここでは、「斑点」は点状の模様、「斑紋」はある程度大きな模様を指しています。
季節|3月下旬~4月上旬頃
高さ|約10~20センチ
場所|南高尾、北高尾 -
山野の日当たりのよい林のふちや草原に生える多年草(複数年のあいだ育成する植物)。同じユリ科のアマナに似て黄色い花を咲かせることから、その名が付けられた。アマナは茎の先に1個の花しかつけないがキバナノアマナは茎の先に数個の花をつけ、多いものでは10個にもなる。花は直径約2~2.5センチで、花びらは6枚。花びらの内側は黄色く、外側は緑色をおびる。花の下には、緑色の小さな苞葉(ほうよう:花のつけねにある葉が変形したもの)がある。花柄(かへい:花をささえる柄)の長さはふぞろいで、約1~5センチ。花は晴れた日に開くが、雨や曇りの日は閉じている。根生葉(こんせいよう:茎の根もと近くから生える葉) は1枚つき、長さ約15~20センチと細長く、花茎(かけい:葉をつけずに花だけをつける茎)よりも高くのびる。やや厚みがあり、白っぽい緑色をしている。花が終わると長さ約7ミリの球形の実をつける。
季節|3月下旬~4月中旬頃
高さ|約15~20センチ
場所|裏高尾 -
山地の明るい林の下に生える多年草(複数年のあいだ育成する植物)。地下茎(ちかけい)を横にのばし、つる枝を出してふえる。茎の先に1~2個の白い花が、斜め下を向いてつく。まれに枝分かれして3個つけることもある。小さな花がおじぎをするように咲く姿を稚児(ちご)に見立てて、その名が付いた。花の直径は約2センチで、先のとがった6枚の花びらが開く。葉は長さ約4~7センチの先がとがった楕円形で、うすく、つやがあり、笹の葉に似ている。花が終わると直径約1センチの球形の実をつけ、熟した実は黒くなる。ホウチャクソウとチゴユリの自然雑種である「ホウチャクチゴユリ」は両種の中間型といった形態で、昭和59(1984)年に高尾山で初めて発見された。
季節|4月中旬~5月下旬頃
高さ|約15~30センチ
場所|1~6号路、稲荷山、蛇滝、いろは、裏高尾、奥高尾、北高尾 -
日当たりのよい林内や草地、道端などに生える多年草(複数年のあいだ育成する植物)。弓のようにしなった茎に白い筒状の花がたくさん垂れ下がる。その姿が田んぼでスズメを追い払うために縄にぶら下げる「鳴子」に似ていることから、この名が付いた。花は葉のつけねから3~5個が並んで垂れ、長さ約2センチで、花びらの先の部分は濃い緑色をしている。葉は長さ約8~15センチ、幅約1~2.5センチで、やや細長く笹の葉に似ている。葉柄(ようへい:葉を支える柄)は短く、茎に互い違いにつき、若葉には白いすじが入ることが多い。同じ仲間のアマドコロとよく似ているが、花の数が多いことと、茎が丸くつるつるしているところが特徴で、見分けるときのポイントになる。
季節|5月上旬~6月上旬頃
高さ|約50~70センチ
場所|裏高尾、奥高尾 -
山地の林のふちや林内に生える多年草(複数年のあいだ育成する植物)。地下茎(ちかけい)をのばしてふえるのでよく群生し、枝分かれをした茎の先に、2~3個の花が下を向いて垂れ下がる。寺院や五重塔の軒下に下がっている大きな飾り風鈴(宝鐸(ほうちゃく)に花の姿が似ていることから、その名が付いた。花は6枚の花びらが筒状に集まった形で長さ約2~3センチ。色は淡い緑色をおびた白色。葉は長さ約5~15センチ、幅約1.5~4センチの楕円形で、先はとがり表面は光沢がある。花が終わると直径約1センチの球形の実をつけ黒色に熟す。花全体がやや緑色をおび、先が暗い紫色をしたものは「ジンバホウチャクソウ」といい、昭和52(1977)年に陣馬山で初めて発見された。
季節|4月下旬~5月下旬頃
高さ|約30~60センチ
場所|1~6号路、稲荷山、蛇滝、裏高尾 -
山地の林内に生える多年草(複数年のあいだ育成する植物)で、群生していることも多い。花はエンレイソウの花よりひと回り大きく、全体の雰囲気はよく似ている。より深山(みやま)に生えることから、その名が付けられた。また、白い花を咲かせることから「シロバナエンレイソウ」の別名がある。エンレイソウとの大きな違いは花びらがあるところで、長さ約2~2.5センチの先のとがった3枚の花びらをもつ。花の下には鮮やかな緑色をした萼(がく:花の外側にある、葉の変化した器官)が3枚ある。花びらが淡い紅紫(こうし)色のものをムラサキエンレイソウという。葉は長さ幅とも約10~15センチの広い卵形で、少し先がとがり、3枚の葉が茎の上部でとりかこむようにつく。
季節|4月中旬~5月上旬頃
高さ|約20~40センチ
場所|裏高尾、奥高尾 -
山野の林の中に生える多年草(複数年のあいだ育成する植物)。名前に深山(みやま)とつくが、平地の林にも普通に見られる。ナルコユリに似ているが、茎にあるすじ状の出っ張りと、葉の幅が広いところが見分けるときのポイント。葉は長さ約6~11センチ、幅約3~4.5センチの広い楕円形で、茎に互い違いにつく。葉の質はややかたく、裏面は粉をまぶしたように白い。花は長さ約1.7~2センチの筒状で、色は白く、先端が淡い緑色をおびる。花糸(かし)という雄しべの軸の部分に、白くやわらかい毛が密生するのが特徴。葉のつけね部分から斜め上を向いて花柄(かへい:花をささえる柄)がのび、その先端に1~3個の花を垂らす。花が終わると直径約8~12ミリの球形の実をつける。実は秋に黒紫色に熟す。
季節|5月中旬~6月上旬頃
高さ|約30~60センチ
場所|1号路、4号路、稲荷山 -
山地の明るい林のふちや草地に生える多年草(複数年のあいだ育成する植物)。全体がやや灰色がかった緑色で、あまり目立たない山野草のひとつ。葉の脇から1センチほどの花柄(かへい)をのばし、2枚の苞葉(ほうよう:花のつけねにある葉が変形したもの)にはさまれるように2つの花が垂れ下がって咲く。その様子が神社の社殿の軒下に吊るされている鰐口(わにぐち:参詣者が打ち鳴らす円形の大きな鈴)に似ていることから、その名が付けられた。花は長さ約2~2.5センチの筒状で、淡い緑色をしており、先の部分が小さく反り返る。花の上につく苞葉は卵形で、長さ約2センチ。葉は長さ約5~10センチ、幅約2.5~4センチの楕円形で、先がややとがる。花が終わると直径約1センチの球形の実をつけ黒く熟す。
季節|5月下旬~6月中旬頃
高さ|約20~40センチ
場所|裏高尾、奥高尾